2024年11月20日
冬がいよいよ本気をだしてきました。
雪が積もり始めました。道路もツルツルしています。
事務所も薪ストーブを稼働させ、火をの世話をしながら過ごす日々です。
今年の秋は、週末に晴れの日が多く、たくさん外に出ることができました。
いい森に出会うたび、自分の森が欲しくなります!
森、欲しいな~~~
10月のお話になりますが、最近の自分の森活動のひとつは、音威子府にある北大の「中川研究林」の自然散策会へ参加したことです。
秋深まる森の中を歩いていると、きらきら光る沢があり、湿地に生える木々が多く見られたのと、特に太めのカツラが多く見られました。
聞くと中川研究林がカツラの北限とのこと。
荒々しくねじれた樹皮と、激しい萌芽更新が起こっている様子からは、凄まじいエネルギーを感じます。
今の時代、太いカツラの木はそう簡単には見られないし、材としても手に入りにくいです。
貴重な大木たちに出会えてうれしくなりパシャパシャ撮りました。
かつて音威子府では「砂澤ビッキ」という木彫作家がアトリエを持ち活動していました。
彼は木と同胞ととらえ、ひとつひとつ真剣に対峙し、ダイナミックかつ繊細な作品を数多く残されています。
作品から発されるエネルギーは凄まじいものがあります。
アトリエは現在「おさしまセンター」として、ビッキの作品が飾られるすばらしい施設となっていますので、一度行ってみていただきたいです。
実は、弊社の音威子府チップ工場では、砂澤ビッキの作品がひっそりと飾られています。
ちなみに「ビッキ」というのはアイヌ語で「カエル」の意味。
これには運命を感じざるをえませんでした🐸(筆者はカエル好き)
そんな砂澤ビッキが愛し、散骨までしたアカエゾマツに会いに行きました。
写真ではわかりにくいですが、かーーーーーーなりの巨木です。
人が4人くらい手を伸ばしてやっと一周手を繋げるくらいの太さです!
成長の遅いアカエゾがここまでくるのにどれだけの年月をかけたのか、思いを馳せずにはいられません。
その神聖さに頭がふわーーっとなります(?)
しっかり抱きついてパワーをもらってきました!
はい、例によってまた前置きが長くなりました。
今回お話したいのは、お肌には大敵だけど、木材にはとてもとても重要な「乾燥」について。
弊社グループでは、バイオマスボイラーを所有し、丸太の加工時に発生したバークや端材を燃やし、製材を乾燥するための熱エネルギーとして利用しています。
2003年から導入され毎日稼働してきたバイオマスボイラーですが、このたび2024年夏にリニューアルされました。
さらに今回のリニューアルに加え、人工乾燥機を4基増設しています。
奥の煙突がついた建物がバイオマスボイラー。
手前の建物と屋根があるゾーンが人工乾燥機です。
人工乾燥機の中のようす
未使用時はこんなにピカピカ。
この中に製材の梱包をいくつか重ねて入れ、乾燥するのを待ちます。
左横のファンみたいなところから高温の蒸気が出てきて、製材を乾燥させるしくみです。
って思ったりしませんか?
じつは自分も入社時は木材乾燥については全然知見がなく、その重要性もそんなにわかっていませんでした。
そういえば大学の時に授業でやったな~?くらい。
ですが製材会社にとって「乾燥」は、製品品質に一番影響を及ぼすといっても過言ではない、非常に重要なものでした。
しかも、ただ乾燥させればいいという訳ではなく、乾燥しすぎたり、やり方を間違ってしまうと木材が大変なことになってしまうので、適切に乾燥するには中々の技術が必要になるのです。
「木材乾燥士」という資格もあるぐらいです。
「乾燥」というとなんだか「ふーん?」て通り過ぎてしまいそうな印象だけど、実はかなり手間もかかるし気をかける必要がある工程なんです。
まず、木は水分をたくさん含んでいます。人間や植物と同じです。
伐られて丸太になり、その後製材に加工されても、しばらく水分は多く含まれています。
(水分がどのぐらい含まれているか、その割合のことを「含水率」といいます。)
乾燥していくと…
①縮む ②割れる ③狂いが生じる(ねじれ・反り・曲がりなど)
などが実は起こってきます。
①は水が与えられなくてしおしおになった植物を想像してみてください。
②も、紙粘土が乾燥していったら割れる感じ。
③は、葉っぱが段々乾燥してくると反ってくる感じとかわかりやすいかも。
(※木の繊維方向の違いで起こるのですが…この詳しい仕組みはまた今度お話しますね)
①~③のような大きい変化が起こってしまうと、製材として使えなくなってしまうので、そうならないように乾燥させる技術が必要になります。
木材がしっかり安定する含水率になるまで乾燥させる、ということが大切です。
木材が安定する含水率を「平衡含水率」といい、樹種によって違いがありますが、大体15~20%前後とされています。
水の中に丸太を沈め、乾燥させるという方法。一見矛盾した方法のように感じるが、均一な乾燥が可能と考えられ、古来から実施されてきた伝統的方法。乾燥には時間を要するが、じっくりと乾燥することで、狂いや割れといったことが起こりにくいとされている。
基本的には、急激に乾燥してしまうと、割れや狂いが生じやすくなってしまうので、
人工乾燥を用いる場合でも、天然乾燥⇒人工乾燥 の流れで行うことが多いです。
天然乾燥である程度ゆっくりと含水率を落とし、急激な乾燥を防ぎます。
水中乾燥に関しては行っているところは少ない印象ですが、
宮大工など、職人が水中乾燥材を求めることも多いそうで、一定のニーズがあるようです。
木の色や艶、香りなどにも違いが出るんだとか。
水の中で乾燥…?と初めは不思議でなりませんでした。
水を使って水を抜くとは…まさに「目には目を歯には歯を」手法ですね。
基本の乾燥方法は、天然乾燥⇒人工乾燥とお伝えいたしました。
人工乾燥にも種類が色々とあるのですが、使用しているのは「蒸気式中温乾燥機」という種類のものです。
バイオマスボイラーから乾燥機へ配管が張り巡らされ、そこを伝って蒸気が移動し熱が送られるしくみです。
乾燥している製材は針葉樹が中心ですが、広葉樹も乾燥します。
針葉樹と広葉樹では、乾燥にかかる時間が異なり、広葉樹の方が時間がかかります。
製品のサイズ(特に厚み)によっても、乾燥のしやすさが変わってくるので
サイズによって乾燥スケジュールを設定しています。
こんな感じで、レールに製材の梱包を載せ、上に重りを置いて乾燥機の中へ。
弊社グループの乾燥手法のこだわりとしては「養生」があります。
養生とは…
人工乾燥機から製材を取り出した後、そのままヤード内にしばらく置いておき、含水率を均一になじませることです。
乾燥機から取り出したばかりの製材は、外側のほうが乾いていて、内側に水分が多い状態になっています。
養生することで、内側の水分が外側へ移動していき、全体の水分が均一になる、ということです。
外の雨ざらしの場所だと、こうした工程を踏むことはできません。
屋根があり室内状態の保管場所があることで、こうした「養生」という工程を実施できています。
乾燥は非常に大切な工程なのですが、現状北海道内で乾燥施設を持っている木材会社はそこまで多くありません。
大規模な設備や場所が必要で、使うにも燃料が必要になりますし、安定した稼働が必要になるため、中々導入には難しい面があるからと考えられます。
自分も、乾燥施設が木材会社にあることが普通ではない、ということを再認識しています。
また、現在製材乾燥の技術について、林産試験場と共同研究を行っております。
理論上で出てくる数字と、実際に現場で出る数字・できることには差があったりすると思うので、こうした共同研究で、現実的かつより良い乾燥手法などが確立されればと思います。
技術的にはまだまだ改善の余地があると考えられますので、ひとつずつ研究しながら
弊社グループでも、引き続き施設を最大限利用できるように努力していきます。